Noah SUZUKI
Bromoil Photography

Treasured ink made in USA

幾つかのインクを試してみたけれど、やはり制作に一番向いているのはコレ。

Graphic Chemical&Inkのクレヨンブラック、No.1803。

海外の映像や投稿された写真を見れば他のインクを使っている人も当然見掛けるし、実際使えるんだろうなとは思うけれど、他のインクは私にはとても扱い辛いものでした。

なので、この子はとても重要で大切にすべきものとなります。

暗めで、ちょっとそれっぽく撮って誤魔化しているけれど、そこら中にインクをつけて真っ黒になってますが、大事にしています。

ブロムオイルではインクの固さが重要で、「リトグラフなんかで使うインクです」と聞かれたら説明していますが、恐らく実際リトグラフで使うインクの殆どは、これよりもかなり柔らかいように思うので、リトグラフ用のインクが全て使える訳ではないのではないかと思います。大抵のリトグラフ用インクは、しっかりと粘り気がありつつも柔らかめという印象なので。このNo.1803はリトグラフ用の中では最も固い部類に入るのではないでしょうか。

昔出版されたブロムオイルの教本にも書いていたと記憶していますが、コロタイプで使うインクでの代用も可能との事だったので、どちらがより手に入り易いかはさておき、固さではコロタイプ用インクの方が他のリトグラフ用のインクよりかは近いのかもしれません。コロタイプも固めのインクをしっかり練って使うようですし。

何度か「油絵の具を使う」というようなテキストを見掛けた事がありますが、試しに使ってみたけれど私にはとてもじゃないが扱えるようなものではなかったです。粘度が殆ど無くサラッとしていて、油分が豊富。これを印画紙の上で扱うのは至難の技ではないか…と使った時に唸ったほど。

驚くほど印画紙の上にただ乗っていく。ハイライトもシャドーも関係ない、そんな状態でした。あれを扱えるなら、きっとどんなインクも扱えて無敵でしょうね。

17 / 03 / 2019

I fell into a slump

ブロムオイルを始めて1年半くらい経った頃、スランプというか沼に落ちてしまった。

よく云うコレクション癖のような沼ではなく、沼。足を取られて身動きが出来なくなるような、沼。はじめは軽く考えていたけれど、一つ一つ問題となっていそうなことをリストに出して、それらを一つずつ解消させて行けども抜け出す事が出来ず、全く解決しないまま日々が過ぎていき…。

まだ少し先だとは云え個展の予定もあったので焦りは日々増して、あの頃の自分を思うと中々に可哀想な気持ちになります。

結局、その沼は半年掛かって抜け出せましたが、半年も続いた絶不調は発狂しそうな程自分を自分で勝手に追い詰めていました。本当に可哀想…。

何が沼かというと、インクが乗らなくなってしまったのです。突如。ほんの少しは乗る、でも前みたいに「印画紙がインクを食べてる」と思うような状態からは程遠くなり、このほんの少し乗った先には一切進まず薄いまま停滞してしまう。

今までそれなりに上手く行ってたのは幻で、これが本来の姿、現実なのだろうかとゾッとした気持ちを抱えつつ、それならそれで何層にも重ねてしまおうと画策した事もありましたが根本的な解決には至っていない付け焼き刃では何もかもがしっくり来なかったのを、よく覚えています。

原因は2つあって、解ってしまえばナンテコトナイというような事でしたが頼れる人も殆ど居ない、あの状況下に身を置くというのは相当厳しかった。おかげで鍛えられましたけど。

あれ以来インクが乗らないなどというウンザリ事件は一切なく、たまに失敗作を生んでもブラシの所為にするくらいの図太さは得ました。

何事も経験だ、と笑ってられるのは乗り越えた時だけ。

16 / 03 / 2019

Inking

熊が冬眠をするように、冬は作業を基本的にしない。

プリントなんかはまだ少しはするけれど、ブリーチとインキングは本当に一切やらなくなり、冬眠状態に入る。大体1月から3月中旬くらいまでは、すっかり眠ってしまう。

なので当然、目覚めたばかりのインキングは酷い。毎度笑ってしまうくらいには酷い。単に技術だけの問題でもないけれど、それにしたって酷い。

そして、とても疲れる。冬眠中に恐らく消えてしまったであろう腕の筋肉。普段の生活で使うのとは少し違う、インキングの時に必要な筋肉。冬眠明けは自分に失望し、筋肉痛にうんざりする。とても愚かな話だけれど、これを7年は繰り返している。

冬眠が明けて、謂わば記念すべきその年最初のインキングは毎回失敗に終わるので、いつもどの絵を作るか迷ってしまう。まぁ十中八九失敗するからと失敗しても良さそうなものを使うと、なんだか守りに入っているようで案の定失敗する。

だからと言って、これは失敗出来ない、絶対に!というものを使っても、まぁ恐らく失敗する。

リハビリ用のものを用意するか否かという問題は、中々着地点が見出せない。

この画像は、失敗した後に作ったブロムオイルの一連の流れです。

こんな感じで、ゆっくりと着実にインクは印画紙に乗っていく。私は、「印画紙がインクを食べている」といつも思っている。

失敗ではないけれど、ちょっとやりすぎたなーと思う一枚。

今年はいつ、自分でもそれなりに良いと思うものが出来るのか、気になるところです。

14 / 03 / 2019